1.4 物体に働く力を見つけるコツ ~これで君も力発見のプロ!~
はじめに:力を見つけるのって、なんでちょっと難しいの?
これまで、重力、垂直抗力、張力、弾性力、そして摩擦力と、たくさんの基本的な力を学んできたね。 でも、いざ問題や実際の状況を目の前にしたとき、「この物体には、一体どんな力が働いているんだろう?」と迷ってしまうこともあるかもしれない。
そう感じるのは自然なことだよ。だって、
- 力は目に見えないから、想像しないといけない。
- 一つの物体に、いくつもの力が同時に働くことがある。
- どの力を考えて、どの力は今は考えなくていい(無視する / 無視する)のか、判断に迷うこともある。
でも大丈夫!これから紹介する「力を見つけるための黄金ルール」を使えば、どんな状況でも落ち着いて、物体に働く力を見つけ出せるようになるはずだよ。 まるで探偵が手がかりを見つけるように、一緒に力の正体を探っていこう!
力を見つけるための黄金ルール (ステップ・バイ・ステップ)
物体に働く力をモレなく、ダブりなく見つけるための手順を、4つのステップで紹介するよ。 この順番で考えていくのがポイントだ!
ステップ1:注目物体 (Object of interest / Focus object) を決める!
まず、「何に働く力を考えるのか?」をハッキリさせよう。これが全ての始まりであり、一番大切なことだよ。 問題文をよく読んで、「~に働く力を図示せよ」と書かれていたら、その「~」が注目物体だ。 もし複数の物体が絡み合っている場合は、面倒くさがらずに一つ一つの物体に順番に注目して、それぞれに働く力を考えていこう。
図1:まず、どの物体に注目するかを決めよう! (例:箱A? それとも箱B?)
ステップ2:触れているものから力を探す (接触力 Contact force)
注目物体が決まったら、次にその物体が「何と触れているか」をよーく観察しよう。そして、それぞれの触れている相手から、どんな種類の力が働く可能性があるかを考えるんだ。
- 面 (床、壁、斜面など) と触れていたら…
- → 垂直抗力 (面から垂直に押される力)
- → 摩擦力 (面に沿って、動きを妨げる向きの力。静止摩擦力か動摩擦力か注意!)
- 糸やロープ、ひもと触れていたら…
- → 張力 (糸に沿って引っぱられる力)
- バネと触れていたら…
- → 弾性力 (バネが自然長に戻ろうとする向きの力)
- 他の物体と直接押したり引いたりしていたら…
- → その押す力や引く力(問題文で $F$ などと与えられることが多い)
例えば、床の上の箱に糸がついていて、それを人が引いている状況を考えてみよう。箱に注目すると…
図2:箱に触れているものから力を考える
この箱は、「① 床」と「② 糸(その先には人がいる)」に触れているね。だから、床からは垂直抗力と摩擦力、糸からは張力が働く可能性がある、と考えることができるんだ。
ステップ3:離れていても働く力を思い出す (非接触力 Non-contact force)
次に、注目物体に、触れていなくても働く力がないか考えよう。 高校の物理(特に力学)で主に登場する非接触力は、そう、重力(地球が物体を引っぱる力)だ! 地球上にある物体には、基本的に必ず重力が働くと思っていいよ。
(ちなみに、電磁気学を学ぶと、電気を帯びた物体の間に働く「電気の力」や、磁石の間に働く「磁力」といった非接触力も出てくるけど、今は力学なので重力をしっかり思い出そう。)
ステップ4:見つけた力を図示する!
ステップ2とステップ3で見つけ出したすべての力について、これまで学んだように、それぞれの力の3要素(作用点・向き・大きさの目安)を意識して、矢印で描き込もう! 描き忘れがないか、逆に余計な力を描いていないか、チェックリスト (Checklist) を作るような気持ちで確認するといいね。
これで、物体に働く力をもれなく見つけ出すことができるはずだ!
力を見つけるときのQ&Aと注意点
- Q1: 作用・反作用の力も全部描くの?
- A1: いい質問だね! 作用・反作用 (Action-reaction) の法則はとっても大事だけど、力の図示をするときは、注目物体に「働く」力だけを描くんだ。注目物体が他の物体に「及ぼす」力(反作用)は、その相手の物体に働く力として、もし必要なら別途その物体に注目したときに描くことになるよ。ごっちゃにしないように気をつけよう! (作用・反作用については第2章で詳しく学ぶよ)
- Q2: 「無視できる力」はどうやって判断するの?
- A2: これも難しいポイントだね。基本的には、問題文の指示に従うのが一番。「なめらかな面(摩擦を無視)」「空気抵抗は無視できるものとする」といった言葉があったら、その力は考えなくてOKだ。もし指示がなければ、最初は学んだ力をすべて考える練習をするのがオススメ。どの力を無視できるかの判断は、経験を積むうちにだんだん分かってくるよ。第4章でこの「物理モデルと現実のギャップ」についてもっと詳しく見ていくからね。
- Q3: なんの種類の力か名前が分からないときはどうすればいい?
- A3: 大丈夫!最初は、無理に力の名前を当てはめようとしなくてもいいよ。まずは「何かよく分からないけど、この物体をこっち向きに押している力があるな」とか「こっちに引っぱる力があるな」と、力の存在とその向き、作用点だけでも捉えられればOK。慣れてくれば、「あ、これは垂直抗力だな」「これは張力っぽいな」と分類できるようになるからね。
【実践トレーニング】いろんな状況で力を見つけてみよう!
さあ、学んだコツを使って、実際に力を見つける練習をしてみよう! 下のアプリでは、いくつかの状況が表示されるよ。それぞれの状況で、色のついた物体(これが注目物体!)にどんな力が働いているか、右の力の種類リストから選んで、力の矢印を適切な場所にドラッグ&ドロップで配置してみてね。(矢印の向きや長さも考えてみよう! 正確な判定はないから、自由に試行錯誤してみてね。)
力の種類
第1章のまとめ と 次の冒険へ!
おめでとう! これで第1章「力の図示の基本」はクリアだ! この章では、力とは何か、基本的な力の種類(重力、垂直抗力、張力、弾性力、摩擦力)、そしてそれらの力を見つけ出すためのコツを学んできたね。
力の図示は、物理の冒険における羅針盤のようなもの。この羅針盤を使いこなせれば、これから出会うどんな難しい問題にも、きっと正しい道筋を見つけられるはずだよ。
さあ、次はいよいよ第2章だ! 第2章では、この「力の図示」を使って、物体が静止し続けるための条件である「力のつりあい」や、力が物体をどのように運動させるのかを表す「ニュートンの運動法則(運動方程式)」について学んでいくよ。 物理の核心に迫る、エキサイティングな内容が待っているから、楽しみにしていてね!